動名詞と不定詞:〜することの使い分け
動名詞と不定詞の選びは、翻訳では決まりません。日本語では enjoy reading も want to go も同じ「〜すること」になるため、日本語側に判断の手がかりがないのです。基準は主要動詞の側にあります。まだ届いていない未来へ矢印を向ける動詞(want・decide・hope)は to + 動詞、手もとに置いた経験を味わう・処理する動詞(enjoy・finish・avoid)は -ing を取ります。矢印と手もとの像ひとつで、大多数が片付きます。
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日本語話者が動名詞と不定詞で固まるのは、ある意味で当然です。どちらを「〜すること」と訳しても同じ文章になってしまい、選択が翻訳に問い返せないのです。それでも英語には英語なりの理があります。行為をまだ届かない地点として扱うか、手に取った品物として扱うかを、単語の形で示しているだけのことです。その一本の筋をこの記事で渡します。
なぜ翻訳では決められないのか
教室で最もよく出る質問はこれです。「I enjoy reading は読書を楽しむ、I want to go は行きたい。どちらも『〜すること』なのに、なぜ形が違うんですか」。答えは単純で、日本語の「〜すること」が2つの英語の形を1語に潰してしまっているからです。対応表を作ろうとしても、母語側のマスが足りないのです。
区別は英語の側にあります。英語は動詞を文の主役にしたまま、その動詞が行為をどう扱うかを形に刻みます。-ing(動名詞)は、行為を名詞のように扱います。もう始まっている、経験済みだ、話題に載っている——そのような「手もとの品」です。to + 原形(不定詞)は、行為をまだ届いていない地点として扱います。望む、決める、約束するといった動詞は、みなその先を指差す矢印です。
つまり選ぶ主役は「行為」ではなく「主要動詞」です。動詞が形を決め、あとはついてくる——この方向性をつかめば、以下はグループ分けの問題に変わります。
判断ルール:to は矢印、-ing は手もと
判断の型を先に言ってしまいます。主要動詞が「まだ届かない先の出来事」を指しているなら to + 原形。「すでに始まっている/話題に載っている行為」の内容として扱うなら -ing。want は望む対象がまだ実現していないので矢印、enjoy は楽しんでいる行為が目の前にあるので手もとの品、という絵が合います。
| 動詞の絵 | 例 | 形 |
|---|---|---|
| 未来へ矢印を向ける:望む・決める・計画する・約束する | want / decide / hope / plan / promise / offer / refuse / agree / need | to + 原形:I need to leave.(出かけなきゃ) |
| 手もとの行為を味わう・処理する:楽しむ・終える・避ける・やめる・続ける | enjoy / finish / avoid / mind / keep / quit / practice / suggest / delay | V-ing:She avoided meeting him.(彼女は彼に会わないようにした) |
| どちらの絵も成立する:始める・続ける・好き嫌いは習慣の話 | start / begin / continue / like / love / hate | どちらも可:It started raining. / It started to rain. |
この絵は驚くほど持ちます。promise を例にとると、約束の内容は必ず未来です。だから I promised to call her.。「約束すること」を手もとの品として提示はしません。同じ理屈で refuse(断る対象はまだの行為)、offer(申し出る内容も未到達)が to に並びます。逆に finish は、終えるのは進行中の行為なので手もとの品。We finished packing.(荷造りを終えた)。mind(構える・気にする)は目の前の行為への反応なので Do you mind opening the window?(窓を開けてくれますか)。
「need」のようにどちらにも見える動詞は、絵のどちらを採るかで見えているものが違います。You need to see a doctor.(あなたは医者にかかるべきだ、と未来を指す)と、This room needs cleaning.(部屋に掃除という処理を要する——品としての扱い、受動的な含み)。この違いを感覚として持てるだけで、to と -ing の迷いが半分以下になります。
頻出動詞を3つのグループに
グループ分けはリスト暗記のためではなく、「初めて見る動詞がどちらの側か」を推測するための練習です。ただし推測の材料は語義だけではないので、頻出動詞は実際に例文で押さえます。ここで挙げているのは、誤用の9割を生む顔ぶれです。
グループA:to + 原形(矢印派)
want・would like・decide・hope・plan・expect・promise・offer・refuse・agree・learn・manage・fail・seem・appear。例:He learned to swim at thirty.(彼は30歳で泳げるようになった)/She refused to answer.(彼女は答えるのを拒んだ)
グループB:-ing(手もとの品派)
enjoy・finish・avoid・mind・keep・keep off・quit・practice・suggest・consider・miss・delay・give up・can't help・imply・involve。例:Any suggestion involving changing the plan is welcome./I couldn't help laughing.(笑いこらえられなかった)
グループC:どちらも可・意味ほぼ同(中立派)
start・begin・continue・like・love・hate・prefer・cease。例:It began to snow. = It began snowing. 書き言葉では start to V が、会話では start V-ing がわずかに多い程度です。
微妙な位置に like / love / hate のニュアンス差があります。I like cooking.(料理をする喜びの話)、I like to cook on Sundays.(週日を選ぶ習慣の話)——厳密にはこう分かれ、日常ではほぼ意識されません。迷う必要がないということは、つまりテストでもエッセイでも好きなほうを書いていいということです。
グループBの suggest だけ一つ注意を。I suggest going now.(今行くことを提案する)は正しく、I suggest to go now. は不可です。「提案内容」を手もとの品として提示する動詞だから、という理屈でつなげておくと、同じ品の扱いをする mention / consider / recommend も自動で片付きます。I recommend waiting an hour.(1時間待つべきだ)がそのまま同じ型で口に出ます。
クイズ:正しい文を選ぼう(全7問)
両方取って意味が変わる動詞
「どちらを取るかで意味が変わる」動詞は、むしろこの仕組みの最もきれいな証拠です。stop を見てください。He stopped smoking.(彼は禁煙した)は、 smoking という手もとの品を「止める」。一方 He stopped to smoke.(彼はタバコを吸うために立ち止まった)は、歩行を止めて to smoke の地点へ向かった、という絵になります。同じ動詞、同じ名詞、形が意味を運んでいるのです。
| 文 | 意味 | 絵 |
|---|---|---|
| remember to lock the door | 施錠するのを忘れないで | 未来の行為へ矢印 |
| remember locking the door | 施錠した記憶がある | 過去の経験を品として手にしている |
| forget to pay the fee | 支払いをし忘れてしまった | やるべきだった先に思い至らない |
| forget paying the fee | 支払ったこと自体を忘れた | 品が手から落ちた |
| try to lift the box | 箱を持ち上げようと努めた | 困難な先へ力を向ける |
| try moving the box | とりあえず箱を動かしてみた(効果を見る) | 行為を実験台に載せて見る |
forget / remember の区別は日本語で特にぼやけます。「鍵をかけるのを忘れた」も「鍵をかけたのを忘れた」も、日本語では「忘れた」です。英語では I forgot to lock up.(かけ忘れ)と I forgot locking up.(かけたのに忘れた、ほぼ使わないが文法的には成立)が分離します。try も同じで、「効くかためす」と「難しさに挑む」が別の文です。I tried restarting the computer(再起動してみた)と I tried to restart it, but the power was out(やろうとしたが叶わなかった)——日本語の「试着」と「努力」の差は、to と -ing の差そのものです。
前置詞の後ろと文頭のパターン
動詞選びの外にも、-ing と to の陣地があります。まず前置詞の後ろは必ず名詞か動名詞。ここに不定詞は置けません。I'm interested in learning Japanese.(日本語を学ぶことに興味がある)、She's good at drawing.(彼女は絵が上手い)、I'm tired of waiting.(待つのに疲れた)。in・at・of・about・for の後ろでは動詞は必ず -ing になる、と約束事を覚えてしまえば終わりです。前置詞と名詞の組み合わせについては 前置詞 in / on / at のガイドと合わせて読むと、to と for の見分けがつながります。
罠は look forward to です。I look forward to meet you. は間違いで、I look forward to meeting you. が正解。この to は不定詞の to ではなく「向かっていく」前置詞の to なので、後ろは名詞か動名詞です。証拠に名詞を置けます:I look forward to your reply.(ご返事を期待您的です)。同じ罠は be used to / get used to(〜に慣れている)にもあります。I'm used to waking up early.(早起きには慣れている)——to が前置詞なら、動詞は -ing に決まっているのです。
一方、不定詞には不定詞固有の陣地もあります。① 形容詞 + to:It's easy to start.(始めるのは簡単だ)、I was surprised to hear it.(聞いて驚いた)。② too / enough + to:She was too tired to cook.(疲れすぎて料理作れなかった)、Is it warm enough to swim?(泳げるほど暖かいですか)。③ 目的語 + to:Tell him to wait.(待っていてと言って)、I'd like you to meet my family.。この3陣地は翻訳しても崩れにくいので、動詞選びと区別して練習するのが効率的です。
最後に文頭。動名詞は主語になれますし、不定詞もなれますが、会話では -ing 主語が自然です。Reading aloud really works.(音読は本当に効く)、Failing in public is embarrassing.(人前で失敗するのは気まずい)。To で始める To err is human.(人間だから過ちは付きもの)は慣用句として生き残っていますが、自分の作文でこれを多用すると堅苦しくなります。主語が長くなったら It is ... to ... の形に逃げると決めておけば安全です。
よくあるミスと練習法
下の5つは、「〜すること」に逃げて翻訳で選んできた人が実際に書き続ける文です。共通しているのは、動詞の絵を見ていないこと。語彙の問題ではなく、方向付けの問題です。
練習法は3つ。まず「動詞 + 例文」一語ずつのカード。enjoy に対して I enjoy reading. をセットで声に出す。動詞単独で形を聞かないこと。次に絵の確認。新しい動詞に出会ったら、「これは矢印か、手もとの品か」を自分に問い、答えを例文の形で固定します。そしてライティング後の一往復。書いた文の動詞にだけ目を走らせて、後ろの形を絵と突き合わせる——1文5秒でできます。書き間違いは PromGeeの無料英文法チェッカーでも拾えます。さらに多くの動詞をドリルで固めたい場合は、ブログ記事一覧から関連ドリルへ進めます。
練習のコツ:動詞を見たら、行為の位置を聞く
to か -ing かで迷ったら、二つの問いで足場を作ります。「その行為はもう手の中にある?(enjoy・finish・avoid なら Yes)」「それともまだ届かない先?(want・decide・hope なら Yes)」。二択で決まれば形は決まります。決まらない動詞(start・like)は、そもそもどちらでも良いグループです。
その日の自分の予定を5つ、to 不定詞で声に出す練習も有効です。I need to email the invoice. I hope to finish the draft today. 未来を指す動詞を連続で使うと、矢印の絵が口に刻まれます。逆に寝る前に、その日に楽しんだことを enjoy / like / finish で -ing リストにして話します。二つの陣営をまとめて触れるのがコツです。
残りの例外(want + 人 + to、tell / ask の目的語 + to など)は、動詞の絵の延長にあります。崩れ始めたら必ずこの記事の二つの陣地に戻ってきてください。
動名詞と不定詞の選択は翻訳では決まりません。日本語ではどちらも「〜すること」。判断は主要動詞の絵です。矢印(未来へ向かう)→ to + 原形:want・decide・hope・plan・promise・refuse・offer・need。手もとの品(経験として扱う)→ V-ing:enjoy・finish・avoid・mind・keep・suggest・practice・can't help。中立(どちらでも可):start・begin・continue・like・love・hate。両方取って意味が変わる:stop・remember・forget・try。前置詞の後ろは必ず -ing(look forward to seeing)。形容詞 + to、too / enough + toは不定詞の陣地。
よくある質問
-ing と to、どちらを取るかはいつまで覚えられますか?
表を丸暗記しようとすると終わりません。やり方を変えて、動詞を「未来に向かう(to)」「手もとの経験を扱う(-ing)」「どちらでも意味が変わらない」の3グループに分類し、それぞれの動詞には必ず例文を1つセットで覚えます。I enjoy reading.、I decided to go home. のように文で頭に入れておくと、会話では文のほうが先に口を出ます。頻出動詞の実質リストは30個もないので、3か月あれば定着します。
like reading と like to read に違いはありますか?
基本的にはどちらも正しく、意味もほぼ同じです。細かいニュアンスを挙げれば、like reading は行為そのものから得られる喜びに、like to read は「読むことを選んでいる」という習慣・判断に重心が寄ります。love・hate・prefer、start・begin・continue も同様に、どちらを使っても違和感は出ません。試験対策というより、好きなほうを口にして構わないグループです。
look forward to see you ではなく to seeing なのはなぜですか?
ここの to は不定詞の to ではなく、前置詞の to だからです。前置詞の後ろには名詞か動名詞しか置けません。I look forward to your reply.(名詞)と同じ構造なので、I look forward to seeing you. になります。to + 動詞の原形という癖がついていると必ずはまる場所で、listen to や be used to も同じ前置詞です。
Remember to lock up. と Remember locking up. はどちらが正しいですか?
両方正しく、時間の向きが違います。remember to V は「これからVするのを忘れないで/忘れずにした」、remember V-ing は「すでにVしたことを覚えている(思い出す)」です。Do you remember locking the door? は「施錠した記憶ある?」、Remember to lock the door. は「施錠し忘れてはいけないよ」。「〜すること」の一言に潰れていた情報を、英語は動詞の形で区別しています。
Reading aloud really works. のように動名詞で文を始めるのは堅いですか?
堅くありません。動詞をing化したものを主語に置くのは文法的に完全に自然で、会話では To become fluent takes years. より Reading aloud really works. のほうが口語的に感じられます。ただし主語が長くなりすぎると読みづらいので、It is easy to learn Japanese. のように to のほうへ組み替えるのが通例です。迷ったら-ing主語で始めて大丈夫です。
書いた文の to と -ing、誰が確かめますか?
英文を PromGee の無料チェッカーに貼ると、 enjoy to travel 型の不一致を指摘して、「動詞が矢印を向けているか、手もとの品を扱っているか」を日本語で説明します。日記もメールも、投稿前に一言で確認できます。
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